研 究 会 案 内 |
このページでは、研究室に関係のある研究会や面白そうな研究会を随時紹介していきます。奮って御参加ください。
2001年度 | 2000年度 |
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問い合わせ先:
田中 和之(東北大学 大学院情報科学研究科 情報基礎科学専攻)
e-mail:kazu@statp.is.tohoku.ac.jp
homepage:http://www.statp.is.tohoku.ac.jp/~kazu/SMAPIP/2002/Workshop/
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問い合わせ先:
佐野 理(農工大・工)
homepage:http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kenkyubu/kyodo/021030.html
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非線型物理と化学反応論の境界領域において、新たな発想と研究方法の開拓を目
指すべく、上記の表題の下に研究会を企画している。本研究会では、(1)多自
由度カオス系のダイナミックスに対する研究の発展、(2)それに基付いた非平
衡統計力学に関する新たなアプローチの展開、(3)非平衡統計現象の典型例で
ある化学反応論における理論実験の両面の進展、の三点を目標に、数学・物理・
化学・生物など、幅広い分野の研究者の交流をはかるために行うものである。
我々はここで、広義の意味で「化学反応」という用語を用いており、一般に複数 のボトルネックを越えて、異なる安定状態へ至る過程全般を指している。この時、 反応過程論において、「局所平衡の仮定」を越える新たな方法論を、力学系カオ スの研究の今後の発展に求めることが、特に重要であると考えている。その理由 は、次の点にある。「局所平衡の仮定」は、例えば、複数のサドル(ポテンシャ ルエネルギー面上の鞍部点)を通過する運動を考えた場合、隣接したサドルを通 過する運動の間に、ダイナミックスの記憶がないことを意味する。しかしながら、 蛋白質の折れ畳みの様に、多数のサドルが関与する反応の場合、「局所平衡の仮 定」と「機能の発現」との間には、大きな矛盾が存在する可能性がある。何故な ら、多数のサドルを越えていく過程が、何らのバイアスも無いランダムなポテン シャル面上における、互いに独立な確率過程であるとすると、蛋白質が折れ畳む のに必要な時間は、天文学的な長さになるからである。 この問題、即ち、“なぜ効率良く折れ畳み、天文学的な数の安定状態の中から、 一義的に最安定構造へ辿り得るのか”という問題は、現在、折れ畳みのエネルギ ー地形が、単にランダムなポテンシャル面ではなく、“ファネル(漏斗)型”構 造を取っているためである、という解釈がなされている。しかし、折れ畳みのダ イナミックスは、漏斗型エネルギー地形上をランダムに滑り落ちていくような (単純な)描像では解釈しきれない部分が多いことが、最近指摘されている。そ の場合、複数のサドルを越えていく過程の間に、確率論的な独立事象としては捉 えきれない「動的な相関」が存在し、それが、「折れ畳みの効率の良さ・頑健さ」 と深く関連しているのではないか、という仮説が考えられる。特に、アミノ酸残 基の総数が増大すればするほど、考え得る状態空間は急激に増大するため、単純 なファネル型描像(ファネル型ポテンシャル地形上の乱歩問題)では捉えきれな い、(限定された)ダイナミカルな経路が、生体高分子としての折れ畳みの機能 (すなわち、効率性・頑健性)に重要な役割を果たしているという可能性が考え られる。このように考えると、分子レベルにおける「機能の発現」と「局所平衡 の破綻」の間には、本質的な関係があるのではないか、という予想に導かれる。 他方で、「全系から、どのようにして有効な自由度を切出すのか」という問題は、 非線型物理・非平衡統計力学の中心的な課題に他ならない。従って、蛋白質の折 り畳みに典型的に見られる問題、即ち、蛋白質の折り畳みのダイナミックスにお いて、どのような自由度が重要なのか、そのような自由度の「力学的」な特徴は 何か、蛋白質の折り畳みにおいて、その周囲にある水分子のダイナミックスは、 どのような役割を演じているのか、その役割を、単なる「熱浴」として扱って良 いのか、等の問題を、多自由度カオス系の課題として研究していく必要性がある。 従って、本研究会では、統計力学における確率概念の適用を問い直すと共に、ロー レンツ気体を念頭においた輸送過程論や、局所平衡とダイナミックスを接ぎ木し ているに過ぎない定常非平衡論を越える着想を、多自由度カオス系の研究の中に 探っていきたい。 蛋白質の折り畳みは一例に過ぎない。より一般的に、生体高分子や超分子に見ら れる「機能の発現」において、「局所平衡の破綻」が本質的な寄与をしているの ではないか、という問題意識の下、高分子や超分子における理論実験両面の研究 と、多自由度カオス系の研究との接点を探り、両者の有機的な関連をはかってい く。 以上に述べてきた世話人からの問題提起をたたき台とし、異なる研究領域との交 流の中から、既成の枠組みを越える研究の展開を促進していくことが、本研究会 の主旨である。そのため、積極的に「自分の研究分野からの視点」で、議論に加 わることのできる人達の参加を呼び掛けたい。研究会は、招待講演者による講演、 および一部の参加者によるポスター発表という構成にしたいので、参加希望者に、 あらためてこちらからポスター発表を依頼する形を取る予定である。 なお、本研究会はニ回目である。一回目は昨年11月13〜14日に奈良女子大学で行 われ、その内容は物性研究76(1),45-143(2001)にまとめられているので、参照さ れたい。 |
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問い合わせ先:
戸田 幹人(奈良女子大学理学部物理科学科複雑系の物理学研究室)
Tel&Fax:0742-20-3383
e-mail:toda@ki-rin.phys.nara-wu.ac.jp
このページに関するご意見・苦情などは こちらへお願いします. (最終更新日:2001年11月7日)