集 中 講 義 の ご 案 内

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複雑系の物理学特論I
「生体分子ダイナミクス入門」

講師:藤崎 弘士 氏 (日本医科大学准教授)

日時 2012 年 11 月 7 日 (水) 10:40-12:10 13:30-15:00
   8 日 (木) 10:40-12:10 13:30-16:40
   9 日 (金) 10:40-12:10 13:00-16:40
 
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t


       本講義では、生命現象の基礎となる、生体分子の振る舞いを計算物理・理論化学等を用いて取り扱う方法について概観する。
       まず、タンパク質、DNAなどの生体分子の化学的な特徴について紹介した後に、それらをどのようにモデル化するかということに関して、
理論化学的な観点から解説する。続いて、生体分子のダイナミクスやその統計性を記述するために必要な、分子動力学と統計力学の基礎を学ぶ。 これらの知識を用いて、生体分子の機能に密接に関わる、リガンド結合と構造変化に関して、最近の論文を交えながら説明する。 最後に、生体分子における非平衡性の重要性について議論し、それを記述し、調べるために必要となるマルチスケールな方法論について述べる。 参考文献: ・G.A. Petsko and D. Ringe、タンパク質の構造と機能、メディカル・サイエンス・インターナショナル (2005). ・岡崎進、吉井範行、コンピュータ・シミュレーションの基礎(第2版)、化学同人 (2011). ・D.M. Zuckerman, Statistical Physics of Biomolecules: An Introduction, CRC Press (2010).

複雑系の物理学特論Ⅱ
「コトの物理学」

講師:樺島 祥介 氏 (東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻 教授)

日時
2011 年 12 月  5 日 (月)   10:40-12:10 13:30-17 :00 (途中休憩)
 6 日 (火)   10:40-12:10 13:30-17:00 (途中休憩)
 7 日 (水)   10:40-12:10 13:00-14:30
     15:00-16:00 複雑系理論セミナーを行います。
 
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t

構成要素が沢山集まることで要素レベルでは予想もつかなかった性質が集合体に生まれる.
“水が凍る”に代表される相転移現象,ファッションや音楽の流行な,意識してみると私たちの周りにはこのようなモノの見方の当てはまる例が多数存在します.
P.W. Anderson (1977年ノーベル物理学賞受賞者)はこうした普遍性を「More is different (量は質を変える)」という言葉で端的に言い表しました.
この授業ではMore is different を情報(コト)の科学にも当てはめる試みについて解説します.

内容 : 1.導入編:情報科学におけるランダム問題と不規則系の統計力学との類似性
・ ランダムエネルギー模型(REM)
・ 情報科学におけるランダム問題の紹介:CDMA通信方式,圧縮センシング,因子分析,ランダム行列の固有値分布,低密度パリティ検査符号(LDPC符号)など
2.技術編I:レプリカ法に基づく性能解析
・ REMのレプリカ解析
・ レプリカ法を用いた性能評価の事例紹介:因子分析,ランダム行列の固有値分布,圧縮センシングなど
・ 1RSB形式とcomplexity
3.技術編II:キャビティ法に基づく確率推論アルゴリズム
・ グラフィカルモデルとキャビティ法
・ キャビティ法による確率推論アルゴリズムの事例紹介:LDPC符号の復号,CDMA通信方式の復調,圧縮センシングのL1信号復元など
・ 1RSBキャビティアルゴリズム

複雑系の物理学特論I
摩擦の物理

講師:松川 宏 氏 (青山学院大学理工学部 教授)

日時
2010 年 7 月  7 日 (水)   10:30-14:30
     15:00からB1206で複雑系理論セミナーを行います。
 8 日 (木)  
10:30-17:00
 9 日 (金)   10:30-17:00
 
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t

摩擦は最も身近な物理現象の一つであり古代から多くの研究がなされてきたが、その基本的な機構について未だ未解決の問題が多い。
しかし近年、実験技術、理論、計算機等の発達により、著しい進歩を見せている。一方、ナノテクノロジーなど新しい技術の進歩は
新しい摩擦の問題を生み出し、それらは物理の問題としても極めて興味深い。また固体界面の滑り摩擦は、第2種超伝導体中の磁束
格子や低次元導体中の密度波のピン止めと運動、さらには地震など、様々な物理現象と密接な関係がある。本講義ではそれらも含む
広義の摩擦現象について、序論から丁寧に説明していく。特に多様な摩擦現象に見られる普遍性と
個性を強調したい。最新の話題についても触れる予定である。

目次: 1,序論
1−1 摩擦の物理?
1−2 摩擦の一般論
2,滑りと摩擦の多様性と普遍性
3,マクロ系の摩擦
4,原子・分子スケールの摩擦

参考文献:1,曾田範宗:「摩擦のはなし」、岩波新書(1971)
2,B. N. J. Persson: "Sliding Friction
- Physical Principles and Applications -",Springer
(1998).
3,松川宏:”滑りと摩擦の科学”
非線形科学シリーズ4、培風館(2009).

複雑系の物理学特論I
自然現象の「そのままモデリング」入門

講師:西森 拓 氏 (広島大学理学研究科 教授)

日時 2009 年 12 月 9 日 (水) 午後 13:30-16:30
   10 日 (木) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

11 日 (金) 午前 10:40-12:10
午後に複雑系理論セミナーを行います。

場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t
物理学は自然界の現象を理解し記述するために形成され発展してきたが,発展のため の主な努力は,少数粒子間の基本的相互作用の記述や多数粒子の場合でも系内の温度が 一定で時間的に定常な系の記述に注がれてきた。

本講義では,そのような系とは異なる複雑で非平衡非定常な系を現 象論的な立場 から取り扱うための手法を解説する。まず,基本的な知識として力学系の考え方や ノイズを含むダイナミクスの基礎を概説し,その後,具体的な現象に対する数理 模型を構成し,計算機実験と理論的手法を併用した解析を試みる。例として,アリの集 団的運動,砂丘の運動,ノイズを含んだ聴覚神経のダイナミクスなどを中心に話題をすすめていく。

参考文献
1. Frank Schweitzer, 'Brownian Agents and Active Particles'
  in Springer Series inSynergetics , Springer, 2003
2. Eric.Bonabeau et al. 'Swarm Intelligence'
    Oxford University Press, 1998
3. 坪田誠・西森拓 '量子渦のダイナミクス/砂丘と風紋の動力学'
  培風館非線形科学シリーズ1巻,培風館, 2008


複雑系の物理学特論I
脳と情報の統計力学

講師:岡田 真人 氏 (東京大学新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 教授)

日時 2008 年 7 月 15 日 (火) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

16 日 (水) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-14:30

17 日 (木) 午前 10:40-12:10
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t
統計力学は、気体の分子の運動のようなミクロ記述とボイルシャルルの法則のようなマ クロ記述とをつなぐ学問です。統計力学を学ぶと、我々はミクロからマクロへつながる 階層的な構造が自然界のいたるところに存在することを意識し、従来の枠組みを超えて 統計力学が活躍できるような気がしてきます。

脳では、百億以上の神経細胞の活動から、意識や感情が生じています。0と1のビットが ある種のルールに従って並ぶと、そのビット系列は画像や音声などの意味ある情報にな ります。脳や情報にもミクロとマクロの階層性が存在して、これらを統計力学的に議論 できそうです。その鍵はスピングラス・レプリカ法に代表されるランダムスピン系の統 計力学にありました。±±の二値状態を取るIsingスピンを脳の神経細胞活動や情報のビ ットに対応させることで、統計力学は脳の神経回路モデルや情報・通信理論の難問を次 々に解き明かしていきました。

ランダムスピン系の一つであるHopfieldモデルを出発点として、知覚や記憶のモデルを 議論します。それを元に、サルが世界をどう見ているか、つまりサルの世界観を可視化 した例を紹介し、Brain Machine Interfaceなどの脳科学の最前線を概説します。 さらにこのモデルは、無線LANや携帯電話に用いられているパリティ検査符号や CDMAにも関係しています。 この講義を通じて、皆さんが知っている統計力学が、脳や情報という一 見物理とは関係ないような分野で大活躍している姿を知ることができます。


複雑系の物理学特論I
レオロジー基礎論

講師: 佐々 真一 氏 (東京大学総合文化研究科 広域科学専攻 助教授)

日時 2006 年 11 月 13 日 (月) 午後 13:30-16:30
14 日 (火) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

15 日 (水) 午前 10:40-12:10
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t
泡、泥、粉、ペーストなど、標準的な流体方程式で記述されない「流れ」は 古来から知られている。この流れに関する学問はレオロジーとよばれる。 レオロジーが対象とする系に多様な現象があることは、レオロジーと名前が ついている本をひとつざっとみるだけで納得できるだろう。それぞれに各論 的な面白さがあるし、説明できていない現象はたくさんある。 講義では、これらの現象について、網羅的に紹介することはしない。それとは 逆に、題材を徹底的に絞り込み、理想的な状況を設定して、多様なレオロジー の世界から、抽象的, 一般的, 普遍的 側面を考察する手がかりを考えていく。
I. Introduction (月曜日午後)
  I-1. 標準的な流れとその基礎づけ
  I-2. 非標準的な流れの例
  I-3. 問題設定
II. 輸送、揺らぎ、応答の基礎 (火曜日午前)
III.降伏応力と jamming (火曜日午後)
IV. ガラス転移とレオロジー (水曜日午前)


複雑系の物理学特論II
ガラススピンモデルとレプリカ法

講師: 野倉 一男 氏 (湘南工科大学工学部)

日時 2005 年 8 月 22 日 (月) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

23 日 (火) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

24 日 (水) 午前 10:40-12:10
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t
自然界に存在する多様性や複雑さを単純な法則から理解しようという試みは 統計物理学の重要な研究テーマの1つである。 その1つとして古くから研究されているものにガラス転移がある。 ガラス転移は動的な相転移であり通常の統計和の解析ではその存在や性質を 明らかにすることはできない。しかし最近、レプリカ法や動的平均場近似理論 の発展によりスピン系のガラス転移の理解に大きな進歩があった。 この講義ではスピン系の平均場理論から出発し、ランダムスピン系の レプリカ法とそれから発展したスピンモデルのガラス転移のレプリカ理論 について解説する。また興味深い結果として長距離反強磁性スピン系に ガラス転移が存在することを最近の研究成果にもとづいて解説する。


非平衡系の物理学—反応拡散系のパターンダイナミクスを中心にしてー

講師: 太田 隆夫 氏 (京都大学基礎物理学研究所 教授)

日時 2004 年 5 月 19 日 (水) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

20 日 (木) 午前 10:40-12:10
午後 13:30-16:30

21 日 (金) 午前 10:40-12:10
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室

A b s t r a c t
非平衡系の未解決問題を熱平衡系と対比させながら平易に解説する。非平衡系 での構造形成の典型であるチュ−リングパターンや興奮性の概念を、反応拡散 系を例にして説明する。さらに、これらの存在様式や運動形態を定量的に表現 する方法として特異摂動法に基づく界面ダイナミクス、パルスダイナミクス の理論を述べる。理解を助けるため、関連する相転移についても言及するかも しれない。わかりやすい講義を心掛けるので教科書は不要である。しかし、ど うしても参考書を必要とする学生のために
蔵本由紀 「散逸構造とカオス」岩波
太田隆夫 「非平衡系の物理学」掌華房
を挙げる。


非線形非平衡系に現われるパターン・運動 ー数理からの理解ー

講師: 三村 昌泰 氏 (広島大学大学院理学研究科 数理分子生命理学専攻 教授)

日時 2003 年 5 月 12 日 (月) 午後 13:30-16:30 (C141)
13 日 (火) 午前 10:40-12:10 (A204)
午後 13:30-16:30 (A204)

14 日 (水) 午前 10:40-12:10 (A204)
場所
奈良女子大学 理学部 C141 教室 / A204 教室

A b s t r a c t
 自然界には様々なパターン、形態、リズムを見ることができる。とりわけ、 非線形非平衡系に現れる現象はあたかも誰かが制御しているかの ような秩序を持ったものが多い。このような現象の研究はこれまで 数学からの接近は皆無であったが、最近数理科学という 新しい学際的研究方法によってこの問題が扱われるようになってきた。 今回の集中講義はその一端を紹介することである。


結合振動子系における同期現象とその周辺

講師:大同 寛明 氏 (大阪府立大学大学院工学研究科 教授)

日時 2002年11月12日(火) 10時40分〜12時10分
13時30分〜16時30分

13日(水)10時40分〜12時10分
13時30分〜16時30分

14日(木)10時40分〜12時10分
13時30分〜16時30分

15日(金)10時40分〜12時10分
15時00分〜16時10分

場所
奈良女子大学 理学部新B棟1207教室

A b s t r a c t
自然界には自発的に時間的なリズムをしめす系が数多く見られます。 このような系は通常、非常に多くの振動子が互いに結合してできており、 それらの振動が同期する結果、全体として一つのリズムが生まれるのです。 はるかニューギニヤの島々では、多数の蛍が木に集会し、夕暮れから夜明けまで、 木全体が規則正しく点滅をくりかえすのが観察されていますが、 これなどはもっとも美しい例です。これに比べると地味ですが、 我々自身を含む生物はおしなべて、 日々、睡眠と覚醒のサイクルをくりかえしています。 また、胸に手を当ててみれば、心臓は規則正しく拍動し、 胃腸は蠕動をくりかえして食物を消化しつつ運搬しています。 また、実験室で様々な振動子結合系を構成して、 それらの同期現象を調べる研究も進んでいます。  この集中講義では、このような現象(巨視的同期現象) を理解し応用するために発展しつつある振動子集団(大自由度結合振動子系) の統計力学・動力学について、基礎から始め、最近の展開までを紹介します。 主な内容は以下の通りです。
1,巨視的同期現象とは
2,非線形振動の基礎と位相縮約
3,少数振動子結合系
4,大自由度系における引き込み相転移
5,振幅振動子結合系
6,様々な問題
7,まとめ


大自由度分子系のダイナミクスと進化

講師:笹井 理生 氏(名古屋大学人間情報学研究科)

日時 2001年11月7日(水)10時40分〜12時10分
13時30分〜16時30分

8日(木)10時40分〜12時10分
13時30分〜16時30分

9日(金)10時40分〜12時10分
場所
奈良女子大学 理学部C棟141教室

A b s t r a c t
形、デザイン、進化の考え方を統計物理学の目でとらえることは、物理学の枠組みを 広げようという試みにつながらないだろうか?ここでは(1)水分子のつくるランダ ムな水素結合ネットワークの運動(2)蛋白質の形と機能と進化、の2つを題材にし て、大自由度分子系の統計物理を考える。とくに、相互作用のフラストレーションと 多谷エネルギー面上の遷移に着目し、柔らかくダイナミックに動く分子系をめぐっ て、情報、エネルギー、物質を伝達し、変換する豊富な能力について考える。講義で お話する項目は以下のような予定。
1,身近にある物質、水の異常な性質
2,蛋白質はユニークな美しい形にフォールドする
3,蛋白質を計算機の中で進化させよう
4,ソフトマシンとしての蛋白質
5,情報素子としての生体高分子

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