以下はどこかで書いた文章をほぼそのままのせたもです。
この分野を総合して解説するには私の知識は不十分なので、
不適当な記述があるかもしれませんが御了承ください。
- 専門: 非線形動力学
- 研究テーマ:パターン形成、粉体、破壊など
非線形動力学は、低自由度の力学系で得られたカオスに関する知見や統計力学から生まれた相転移の概念などに基づいて、一見全く異なる多種多様な現象を形作る共通の法則を理解することを目指している。
統計熱力学は熱平衡系と呼ばれる時間的に変化しない一様な系の性質を明らかにする上で非常に成功したが、現実に見られる多くの系は時間的に発展して複雑な空間構造(パターン)を形成する。
これらは物理的に見ると非常に自由度の大きな力学系であり、その時間発展を統計力学的手法を用いていかに理解するかが課題になる。
現在、研究対象は従来の熱平衡系の枠組からは全く外れている系にも広がっている。
以下に現在までに私が行なった主な研究を紹介します。論文, proceeding
- 粉体の準静的変形の力学
- 水+粉体混合系の三次元乾燥破壊
- 乾燥亀裂のパターン形成
乾いた泥の表面に日常よく観察するように、粉体と水の混合物を乾燥させると亀裂模様が生じる。
このようなゆっくりとした変化に伴って生じる破壊現象は古くは Griffith によっ
て熱力学を用いて研究されたが、実際の素過程は通常強い散逸を伴うため、破壊
条件、き裂の進行速度、分岐条件など多くの未解決な問題が数多く残っている。
粉体の破壊の理論的研究の手始めとして、散逸を伴う線形弾性体の薄い層がゆっくり収縮したときに生じる2次元的な亀裂形成を研究している。
- 分裂する離散要素集団 のダイナミクス
物理に限らず多くの系で見られる fingering pattern (雪の結晶、放電、バ
クテリアコロニー、川の地形など)は各枝の先端部分を1つの要素ととらえれば、全要素の運動の軌跡とみなすことができる。
多くの場合、1つの finger は他との相互作用によって安定に存在し、成長しすぎると分裂するという性質がある。
このように単独では不安定な要素が数を変化させる系のダイナミクスはは簡単
な"おもちゃ"モデルである程度考察することができる。
分裂をルールとしてモデルに導入することで、乱流状態、フラクタル、
spatio-temporal intermittency など fingering pattern の実験で観察さ
れているいくつかの典型的な振舞いが再現できる。
- バクテリアコロニーのパターン形成機構
バクテリアコロニーは通常、養分を仕込んだ寒天培地で培養され数cm大に成長する。
悪培養条件下で多くの種が fingering pattern と呼ばれる樹木状パターン、同心円パターン、スポット状パターン、時空乱流などの多様なパターンを形成することが知られている。
これらのパターンはバクテリア密度と養分濃度などを変数とする偏微分方程式モ
デルによって再現し、理論的に仕組みを調べることができる。
研究室
kitsune@minnie.disney.phys.nara-wu.ac.jp